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有名アーティストの作曲方法から学ぶ基礎知識と手順

私たちが普段何気なく耳にしている名曲の数々。
それらがどのようにして生まれているのか、その裏側には意外とシンプルな法則や共通点が存在します。
「作曲なんて特別な才能がないと無理だ」と思い込んでいませんか?
実は、総務省統計局の調査(出典:総務省統計局『令和3年社会生活基本調査』)によれば、趣味として「楽器演奏」を行っている人は日本国内だけでも数多く存在しており、音楽活動は決して特別な人だけのものではなくなりつつあります。
ここでは、プロのアーティストたちが実際に現場で行っている具体的な手法を分解し、音楽理論や楽器演奏の経験が浅い私たちでも、今日から真似できる形に落とし込んで解説していきます。

スマホアプリやボイスメモを活用する手軽な作り方

「作曲」と聞くと、防音室にこもって五線譜に向かう姿や、巨大なスタジオで複雑な機材を操作する様子を想像するかもしれません。
しかし、現代のトップアーティストの多くは、もっとラフで、もっと日常に近いスタイルで制作をスタートさせています。
その代表的なツールが、皆さんの手元にもある「スマートフォンのボイスメモ機能」です。
これは単なる録音機ではなく、プロ・アマ問わず最強の作曲ツールと言っても過言ではありません。

例えば、世界的なシンガーソングライターであるチャーリー・プース(Charlie Puth)は、日常の中で聞こえる音(コップを叩く音やドアの開閉音など)をスマートフォンで録音し、それを楽曲のリズムやメロディの種として使うことで知られています。
彼のように、ふとした瞬間に降りてきたメロディや、気になった音をその場で記録する。
これだけで、すでに立派な作曲のプロセスは始まっているのです。
多くの名曲は、散歩中や入浴中、あるいは寝起きのリラックスした瞬間に生まれた鼻歌からスタートしています。

また、近年ではテクノロジーの進化により、録音した鼻歌をAIが解析し、即座に楽譜やMIDIデータ(電子的な演奏情報)に変換してくれる画期的なスマホアプリも多数登場しています。
「HumOn」や「Chordana Composer」といったアプリを使えば、楽器が全く弾けなくても、音楽理論がわからなくても、自分の頭の中にある漠然としたイメージを具体的な「曲」の形にすることが可能です。
これにより、作曲のハードルは劇的に下がりました。
もはや「楽器が弾けないから曲が作れない」という言い訳は通用しない時代になったと言えるでしょう。

重要なのは、最初から完璧なフルコーラスを作ろうとしないことです。
プロの作曲家でも、最初から最後まで一気に書き上げることは稀です。
日々の生活の中で「あ、このフレーズいいな」と思ったら、とにかくスマホに残す。
そうして溜まった数十個、数百個の「メロディの断片」が、後の制作で行き詰まった時に自分を助ける宝の山となります。
10秒のサビだけのメロディでも、それが将来、世界中の人の心を動かす名曲の種になる可能性を秘めているのです。

ここがポイント

「作曲しよう!」と意気込んで机に向かうよりも、リラックスしている時の方が脳はクリエイティブなモードになっています。
ボイスメモは、その瞬間の鮮度を保ったままアイデアを保存できる最高のスケッチブックです。
まずは「断片」をスマホに貯めていく習慣をつけましょう。

詞先と曲先どちらが良いか迷う時の選び方

楽曲制作において永遠のテーマとも言えるのが、「歌詞を先に書く(詞先:しせん)」か「メロディを先に作る(曲先:きょくせん)」かという問題です。
これに正解はなく、アーティストによって得意な手法は異なりますし、同じアーティストでも曲のタイプによって使い分けることが一般的です。
それぞれの特徴を理解し、自分の作りたい曲に合わせて選択することが重要です。

詞先(しせん)のメリットは、言葉の持つリズムやメッセージ性が強くなり、ストーリー性のある楽曲を作りやすい点にあります。
フォークソングや弾き語りのアーティスト、あるいは演歌の世界ではこの手法が多く見られます。
「どうしても伝えたいメッセージがある」「歌詞の世界観を最優先したい」という場合は、詞先の方が感情を乗せやすいでしょう。
言葉のイントネーションに合わせてメロディが導かれるため、日本語として自然な響きの曲になりやすいのも特徴です。
ただし、言葉数にメロディが縛られるため、音楽的な展開やリズムの自由度はやや制限される傾向があります。

一方、曲先(きょくせん)のメリットは、音楽としての心地よさ、グルーヴ感、キャッチーさを優先できる点です。
現在のJ-POP、ロック、ダンスミュージックの多くは、まずコード進行やトラック(伴奏)を作り、そこに「ラララ」やデタラメな英語(仮歌詞)でメロディを乗せ、最後にその響きにハマる日本語の歌詞を当てはめていくというプロセスで作られています。
この手法の最大の利点は、洋楽のようなリズム感や、耳に残るキャッチーなフレーズを生み出しやすいことです。
また、トラックメイカーが曲を作り、トップライナー(メロディを作る人)がメロディを乗せ、作詞家が歌詞を書くといった「分業(コライト)」がしやすいのも曲先の特徴です。

さらに、第三の選択肢として「同時進行」というパターンもあります。
ギターやピアノを弾きながら、適当な言葉で即興的に歌っているうちに、奇跡的に「歌詞」と「メロディ」が同時に降りてくる瞬間です。
サザンオールスターズの桑田佳祐さんなどは、曲先でありながらも、デモテープの段階で既に意味のある言葉とデタラメな言葉が混在しており、その語感の良さを生かして歌詞を完成させると言われています。
初心者のうちは、どちらか一方にこだわらず、両方の手法を試してみて、自分にしっくりくるやり方を見つけるのが良いでしょう。

プロの現場では

最近のヒットチャートを賑わす楽曲では、まず「ビート(リズム)」と「コード進行」だけのトラックを作り、それをループさせながら何度も鼻歌を歌って、一番気持ちいいメロディを探る「トップライン・ライティング」という手法が主流になっています。

ピアノやギターなど楽器を使ったコード進行のコツ

楽器を使って作曲する場合、多くの人が「コード進行(和音の流れ)」から着想を得ています。
コード進行とは、楽曲の雰囲気や物語の背景を決める「背景画」のようなものです。
好きなコードをピアノやギターでいくつか鳴らしてみて、その響きに導かれるようにメロディを紡いでいく方法は、最もオーソドックスかつ効果的な作曲法の一つです。

特にピアノは、鍵盤を押すだけで和音の全体像が見えやすく、メロディと伴奏を同時に確認できるため、作曲にはうってつけの楽器と言えます。
一方、ギターは「ストローク」によるリズム感が生まれやすく、躍動感のある曲を作るのに向いています。
初心者が陥りやすいのが「複雑で難しいコードを使わなきゃいけない」という思い込みですが、これは大きな間違いです。
実は世の中で大ヒットしている曲の多くは、「カノン進行(パッヘルベルのカノンに基づく進行)」や「王道進行(F-G-Em-Amなど)」、「小室進行(VIIm-IV-V-I)」と呼ばれる、昔からある定番のコード進行で作られています。

これらの定番進行は、人間の耳に心地よく響き、感情を揺さぶることが歴史的に証明されている「黄金パターン」なのです。
プロのアーティストたちも、これらの既存の進行をそのまま使い、リズムや楽器の音色、そしてメロディのアプローチを変えることで、全く新しい曲として成立させています。
ですから、まずは自分が「いいな」と思う既存のヒット曲のコード進行をネットで調べ(「曲名 コード」で検索すればすぐに出てきます)、それをそのまま弾きながら、オリジナルのメロディを乗せてみることから始めてみましょう。
これは決して「パクリ」ではなく、音楽の歴史の中で受け継がれてきた正当な技法であり、立派な学習方法です。

また、最近では「丸サ進行(椎名林檎の『丸の内サディスティック』で使われたJust The Two Of Us進行)」のように、お洒落で都会的な響きを持つコード進行も人気です。
まずは一つの進行を徹底的に使い倒し、そこから自分なりのアレンジを加えていくのが上達の近道です。
コード進行の基礎や、具体的な押さえ方については、以下の記事で初心者向けに図解付きで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
ピアノコード初心者の疑問解決!基本ガイド

天才たちも実践する鼻歌からメロディを作る手順

「楽器が弾けないから作曲は無理」と諦める必要は全くありません。
世界的なトップアーティストの中にも、楽譜が読めない、あるいは楽器演奏が得意ではないという人は意外と多いのです。
彼らが最大の武器にしているのが、自身の身体一つで奏でられる「鼻歌」です。
これは最も原始的でありながら、最も自由度の高い楽器です。

伝説的なエピソードとして有名なのが、キング・オブ・ポップことマイケル・ジャクソンです。
彼は楽譜を書けませんでしたが、頭の中で鳴っているオーケストラの全てのパート、ベースライン、ドラムのビート、そしてボーカルのメロディを、全て「口三味線(ビートボックスや歌)」でテープレコーダーに録音していました。
そして、一流のスタジオミュージシャンを呼び、彼らにそのテープを聞かせ、「ベースはこの音色で、こう弾いてくれ」と一音一音指示を出して曲を完成させていたのです。
名曲『Billie Jean』のあの印象的なベースラインも、彼の頭の中で鳴っていた音が具現化されたものです。

鼻歌で作るメロディの最大の強みは、「無理のない、歌いやすいラインになる」ことです。
ピアノやギターで鍵盤や指板を見ながら作ると、どうしても手癖が出たり、理論的に正しいけれど面白みのないメロディ、あるいは音域が広すぎて人間には歌えないメロディになりがちです。
しかし、自分の声を使って感覚的に生み出したメロディには、その人の人間性、呼吸のリズム、そして感情の機微がダイレクトに反映されます。
それは聴く人にとっても、自然と口ずさみたくなるような親しみやすいメロディになる可能性が高いのです。

ステップ 内容 ポイント
1. 録音 スマホのボイスメモを回しっぱなしにして歌う。シャワー中や散歩中がおすすめ。 恥ずかしがらずに大きな声で歌うこと。音程が多少ズレていても気にしない。
2. 選別 録音を聞き返し、良いフレーズだけ残す。 録音した直後ではなく、数日置いてから聞くと客観的に判断できる(「寝かせる」作業)。
3. 具体化 楽器やアプリで音を探して形にする。 耳コピの要領で、録音したメロディと同じ音を鍵盤で探して当てはめる。

初心者が参考にしたい制作環境とDAWソフト

現代の作曲において欠かせないのが、パソコン上で音楽制作を行うための「DAW(Digital Audio Workstation)」と呼ばれるソフトです。
DTM(Desk Top Music)とも呼ばれますが、これがあれば自宅の部屋がプロのレコーディングスタジオに早変わりします。
かつては何百万円もした機材の機能が、今やノートパソコン一台の中に全て収まっているのです。

初心者が最初に揃えるべき機材は、以下の3点があれば十分スタートできます。
いきなり高価な機材を買う必要はありません。まずは手持ちのもので始めて、限界を感じたら買い足していくスタイルが賢明です。

  • パソコン(またはハイスペックなタブレット):最近のPCであれば、特別なスペックでなくても入門用のDAWは十分に動きます。MacでもWindowsでも構いません。
  • DAWソフト:作曲のメインとなるソフトです。多くのメーカーから無料版や廉価版が出ています。
  • オーディオインターフェース:ギターやマイクの音を綺麗にパソコンに取り込むための箱です。歌を録音したい場合は必須ですが、打ち込み(マウスで音符を配置する)だけなら無くても始められます。

DAWソフト選びで迷ったら、使用しているパソコンのOSに合わせて選ぶのが無難です。
Macユーザーなら、Apple製品に標準搭載されている「GarageBand」が最強の入門ツールです。プロ用ソフト「Logic Pro」の弟分にあたり、無料で使えるとは思えないほど高機能です。
Windowsユーザーなら、世界中で使われている「Cubase」のAI/LE版(オーディオインターフェースに付属していることが多い)や、完全無料でありながら高機能な「Cakewalk by BandLab」がおすすめです。
他にも、ループ素材を並べるだけで直感的に曲が作れる「Ableton Live」など、自分の制作スタイルに合ったものを見つける楽しみもあります。

最初は機能が多すぎて画面を見るだけで戸惑うかもしれませんが、全ての機能を使う必要はありません。
まずは「ドラムのリズムパターンを並べる」「ピアノの音を出してみる」といったシンプルな遊びから始めてみてください。
シンセサイザーの音作りやDAWを使った具体的な音の加工については、こちらの記事でも基礎から解説しています。
シンセサイザーとは?ピアノとの違いから音作りまで解説

目次

実例で見る有名アーティストの作曲方法と思考法

ここまで基礎的な手法を見てきましたが、ここからは視点を変えて、実際に日本の音楽シーンを牽引しているトップアーティストたちが、どのようなアプローチで楽曲を生み出しているのか、その具体的なエピソードや制作スタイルを深掘りします。
彼らのやり方をそのまま真似するのではなく、その根底にある「思考法」や「マインドセット」をヒントにすることで、あなたの作曲活動に新しい風を吹き込むことができるでしょう。

米津玄師やAyaseに見るDTM中心の制作スタイル

米津玄師さん(ハチ)や、YOASOBIのコンポーザーであるAyaseさんは、まさに現代的なDTM(パソコン制作)世代を象徴するアーティストです。
彼らの最大の特徴は、作詞・作曲・編曲(アレンジ)から、場合によってはミックス(音のバランス調整)までを、パソコン一台で一人で完結させる能力が高い点にあります。
かつての音楽業界では、作曲家、作詞家、編曲家が分業するのが当たり前でしたが、彼らはその境界線を軽々と超えていきました。

特にAyaseさんは、YOASOBIとしての活動初期には、決してハイスペックとは言えないノートパソコン1台とヘッドホンだけで、驚くべきクオリティの楽曲を量産していたことで知られています。
彼らの制作スタイルから学べる最も重要な教訓は、「高価な機材や立派なスタジオがなくても、アイデアとセンス、そして使いこなす技術があればヒット曲は作れる」という事実です。
DAWの画面上でパズルのように音を組み合わせ、何度も試行錯誤を繰り返し、ミリ単位でタイミングを調整しながら、緻密な構成を作り上げていく。
これは現代の作曲家にとって、最も合理的で、かつ自分の頭の中のイメージを100%再現できる自由度の高い方法と言えるでしょう。

藤井風の音楽的ルーツとピアノ弾き語りの創作術

彗星のごとく現れ、その圧倒的なピアノ演奏力と独特のグルーヴ感で瞬く間に日本の音楽シーンを席巻した藤井風さん。
彼の音楽がなぜあれほどまでに人の心を打つのか、その秘密は彼の幼少期からの「狂気的」とも言える音楽体験と、そこから培われた創作スタイルにあります。
彼のYouTubeチャンネルを遡ればわかるように、ジャズ、クラシック、昭和歌謡、洋楽R&B、そして演歌に至るまで、ありとあらゆるジャンルの曲をピアノ1本でカバーし続けてきました。

彼の作曲方法は、おそらく「ピアノとの対話」から生まれています。
一般的なコード理論に基づいて作るというよりは、鍵盤に指を置いた瞬間に響く和音(コード)の美しさや、即興的に指を走らせた時に生まれたフレーズからインスピレーションを受け、そこに彼特有の岡山弁と英語の響きを自由にミックスさせた歌詞を乗せていくスタイルです。
ここで重要なのは、彼が単に楽譜通りに弾くのではなく、原曲のエッセンスを吸収し、自分なりの解釈(アレンジ)を加えてアウトプットしている点です。

多くのピアノ学習者が陥りがちな「楽譜がないと弾けない」という状態とは対照的に、彼は「理論よりも耳の良さと感性」を何よりも重視しています。
「このコードの次はこれが来るはずだ」という理論的な予測よりも、「この音の次にこの音が来たら気持ちいい」という生理的な快感を優先する。
自分が心地よいと感じるグルーヴを徹底的に追求する姿勢こそが、彼の音楽の根幹です。

弾き語り系シンガーソングライターを目指す人にとって、彼のスタイルから学べることは「とにかく好きな曲を耳コピして、自分の手癖になるまで弾き倒す」ことです。
理論書を読んで頭で考える前に、指先と耳で「気持ちいい響き」のデータベースを自分の中に構築する。
そうすることで、いざ作曲しようとした時に、理屈ではなく身体から自然とメロディが溢れ出てくるようになります。
まずは、好きな曲のコード進行を真似して、リズムだけを変えてみる。そんな遊びのような感覚から、あなただけの名曲が生まれるかもしれません。

耳コピの重要性

藤井風さんのように、ジャンルを問わず大量の音楽を聴き、それを楽器で再現するプロセスは、作曲における「語彙力」を劇的に高めます。
最初は完璧でなくても良いので、耳だけを頼りに音を探す習慣をつけてみましょう。

King Gnu常田大希が語る理論と感性の融合

King Gnuの楽曲すべてを手掛け、millennium paradeなどのプロジェクトでも世界的な評価を得ている常田大希さん。
彼は東京藝術大学でチェロを専攻していた経歴を持つ、いわば「音楽のエリート」であり、高度な音楽理論の持ち主です。
しかし、彼の作る音楽は、クラシックのような堅苦しさは微塵も感じさせず、ロック、ヒップホップ、ジャズ、現代音楽などが複雑に絡み合った、極めて独創的で破壊的なポップスです。
ここには、これから作曲を学ぶ私たちが目指すべき一つの「到達点」があります。

彼のアプローチの凄さは、「高度な音楽理論を使いこなしながら、それを最終的には大衆に届くキャッチーな形(J-POP)に落とし込んでいる」というバランス感覚にあります。
楽曲を分析すると、転調(キーが変わること)や複雑なテンションコード(不協和音ギリギリの響き)が多用されており、音楽的には非常に高度なことをやっています。
しかし、歌のメロディライン自体は、昭和歌謡や童謡に通じるような、誰でも口ずさめる親しみやすさを持っています。
この「マニアックな伴奏」と「キャッチーなメロディ」の融合こそが、King Gnuサウンドの正体です。

常田さんはインタビューなどで「理論は知っているけれど、作るときは感覚」といった趣旨の発言をすることがあります。
これは「理論を知らなくていい」という意味ではありません。
「理論を完全に血肉にしているからこそ、あえてそのルールを破ったり、崩したりして遊ぶことができる」という、プロフェッショナルな余裕の表れです。
初心者のうちは、どうしても「正しいコード進行」や「正しいメロディ」に縛られがちですが、ある程度知識がついたら、今度はそれを意識的に壊してみる勇気が必要です。
「理論的に間違っていても、カッコよければ正解」というロックなマインドセットを持つことで、あなたの曲は一気に個性的になります。

また、彼は「サンプリング」という手法(既存の音源の一部を切り取って再構築するヒップホップの手法)も多用します。
これは、ゼロからメロディを作るのではなく、偶然生まれた音の響きやノイズさえも音楽の一部として取り入れる柔軟な発想です。
机上の空論ではなく、実際の音の響きを何よりも大切にする彼の姿勢は、DAWを使って作曲する現代のクリエイターにとって大きな指針となるでしょう。

インスピレーションが湧かないスランプの脱出法

どんなに才能あふれる天才アーティストであっても、アイデアが全く出てこない、何を作っても気に入らないという「スランプ」の時期は必ず訪れます。
プロの世界で何十年も活躍している大御所でさえ、「毎回、曲が書けなくて苦しんでいる」と吐露することは珍しくありません。
では、彼らはどのようにしてその苦しい時期を乗り越えているのでしょうか?
多くのインタビュー記事やドキュメンタリーで語られる共通の解決策は、意外にも「音楽から完全に離れる」というシンプルな方法です。

無理に絞り出そうとしない

机に向かってうんうん唸っていても、良いアイデアは決して生まれません。
脳が疲弊している状態では、新しい回路が繋がらず、過去の手癖やありきたりなフレーズしか出てこないからです。
これは脳科学的にも、創造性を司るネットワークが機能していない状態と言えます。

散歩をする、映画を見る、美味しいものを食べる、美術館に行く、あるいはひたすら寝る。
そうやって意識を音楽以外のことに向け、脳を「空っぽ」にしている時にこそ、ふとした瞬間に「あ、このリズムいいかも」「こんな歌詞が書きたい」という啓示のような瞬間が訪れるそうです。
これは「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれる脳の働きで、ぼーっとしている時にこそ、脳内で記憶や情報の整理が行われ、新しいアイデアが結びつきやすくなる現象です。

また、「インプット(情報の吸収)」と「アウトプット(創作)」のバランスを見直すことも重要です。
スランプに陥る人の多くは、アウトプット過多になり、自分の中の引き出しが空っぽになっているケースが多々あります。
新しい音楽を聴く、本を読む、人と話すなどして、自分の中に新しい刺激を取り入れる期間を設けることで、自然と「出したい」という欲求が湧いてくるのを待ちましょう。
スランプは「才能が枯渇した」のではなく、「次のステップに進むための充電期間」だとポジティブに捉え、焦らないことが何よりも大切です。

自分の体験や映画から着想を得るプロの視点

「曲を作りたいけれど、何を歌えばいいかわからない」「テーマが決まらない」という悩みは、作曲初心者にとって最大の壁の一つです。
この問題に対して、多くのアーティストは「自分の心が動いた瞬間」を切り取ることの重要性を説いています。
それは、大恋愛や劇的な別れのような特別なイベントである必要はありません。
「夕焼けが綺麗で少し切なくなった」「コンビニの帰り道の空気が冷たかった」「友人の何気ない一言が嬉しかった」といった、日常に転がっている些細な感情の揺れ動きで十分なのです。

あいみょんさんや優里さんのような、共感性の高い歌詞を書くアーティストは、こうした日常のワンシーンを解像度高く切り取り、そこから想像を膨らませて一つの物語を作り上げる能力に長けています。
スマホのメモ帳に、その日感じたことや、気になった言葉を一行日記のように書き留めておくだけで、それは立派な歌詞のストックになります。

また、自分の実体験だけでなく、映画や小説、漫画、アニメなどのフィクションから着想を得る「物語性のある作曲」も非常に有効な手法です。
「もし自分がこの映画の主人公だったら、このシーンでどんなことを思うだろうか?」という視点で歌詞を書いたり、「このラストシーンのエンドロールに流れるBGMを作るとしたら?」とイメージしてコードを並べたりする方法です。
これなら、自分の人生経験が少なくても、無限に世界観を広げることができます。
YOASOBIのように「小説を音楽にする」という明確なコンセプトを持つユニットが大ヒットしたことは、この手法の有効性を証明しています。
自分という枠を超えて、誰かの人生や架空の物語を音楽にする。
そう考えるだけで、作曲のテーマは無限に湧いてくるはずです。

有名アーティストの作曲方法を参考に名曲を作ろう

ここまで見てきたように、有名アーティストたちの作曲方法は十人十色であり、絶対に正しい「正解」というものはありません。
鼻歌から作る人もいれば、緻密な計算の元に作る人もいる。
歌詞から書く人もいれば、トラックから作る人もいる。
しかし、彼ら全員に共通しているのは、「自分にとって一番楽しめる、一番しっくりくるやり方を見つけている」という点ではないでしょうか。

最初からプロのようにDAWを使いこなす必要もなければ、複雑な理論をマスターする必要もありません。
今日、お風呂に入りながらふと思い浮かんだメロディをスマホのボイスメモに吹き込む。
それだけでも、あなたはもう「作曲家」としての第一歩を踏み出しています。
今回紹介した手法や思考法の中から、あなたの感性に合うものを一つでも取り入れ、まずは一曲、短いフレーズからでも形にしてみてください。
その小さな一歩が、やがて誰かの心を揺さぶり、世界を彩る名曲へと繋がっていくかもしれません。
音楽は自由です。あなたの頭の中で鳴っている音を、恐れずに世界へ解き放ってみましょう。

まとめ

この記事では、以下のポイントについて解説しました。

  • スマホのボイスメモや鼻歌アプリは、プロも愛用する最強の作曲ツールである。
  • 詞先・曲先・同時進行、自分に合ったスタイルを見つけることが大切。
  • 楽器が弾けなくても、既存のコード進行を参考にすれば作曲はできる。
  • 藤井風やKing Gnuなど、天才たちも独自の感性と理論を融合させている。
  • スランプの時は無理に作らず、インプットや休息を優先する。

有名アーティストの作曲方法を知ることは、単なる知識の蓄積ではなく、あなたの創作意欲を刺激する燃料となります。
ぜひ、この記事を参考に、あなただけの音楽を作り始めてください。

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